むし歯の発生のしくみ|石神井公園駅徒歩1分の歯医者|L歯科クリニック|平日20時30分まで土日も診療

歯科医療コラム

むし歯の発生のしくみ

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皆さん、こんにちは。L歯科クリニックです。

今回はむし歯の発生の仕組みについてお話したいと思います。

 

むし歯は専門的に言うと齲蝕(うしょく)と言います。齲蝕は歯周病と並ぶ、歯科の二大疾患のうちの1つと考えられています。その齲蝕、どうしてなるのでしょうか。毎日コーラを飲んだり、アイスクリームを食べたりしている人、要注意です。でも、「そんなに毎日甘い物も食べないし、糖質が高い物も気を付けてる。しっかり歯を磨いているんだけど、毎回歯科医院に行くと、むし歯があるって言われるんだよなぁ」という人、いませんか?実は齲蝕になりやすい人とそうでない人がいます。それは、いったいなぜでしょうか。むし歯ってお口の中の細菌が原因で、磨かないと細菌が増えて酸を産生するから歯が溶けるというのは、皆さんご存じかもしれません。以前のコラムの通りです。しかし、人間の体はとても複雑で、口腔内の細菌が悪さをするというだけでは説明がつかないのです。Keyes' model (1963) 

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1963年にアメリカの研究者だったカエスP.H.は、齲蝕の発生と進行は細菌、糖質、宿主が主な因子で、こららの因子が重なり合った時に初めて齲蝕が発生するという3つの輪(カイスの輪)を提唱しました。むし歯ができる要因は、①むし歯の原因菌、②糖質(食べ物の残りカス=細菌の栄養素)、③歯質(歯の強さ)という3つが揃った時ということです。さらに、1989年にはNewbrun, E.は「カイスの輪」に④時間という第4の因子を加えています。むし歯は、歯を磨いたから大丈夫とか、甘いものを食べないから大丈夫とかではありません。このように、様々な因子が複雑に絡み合って、むし歯が発生することが分かりました。従って、齲蝕は多因子疾患であると言えます。

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①細菌因子

近年の研究で、むし歯の中には多種の口腔細菌が生息していることが分かっています。そのほとんどが、健康な人の口腔内からも発見される口腔内常在菌です。中でもミュータンスレンサ球菌(mutans streptococci)は、最も齲蝕病原性が高いとして知られています。ただし、割合はそこまで多くなく、ミュータンスレンサ球菌以外のレンサ球菌や、アクチノミセス(アクチノマイセス)の方が多いようです。

②糖質因子

長い間研究や調査によって、糖質(お砂糖)と齲蝕の関係性が明らかにされてきました。第二次世界大戦中、多くの国で砂糖の輸入が困難になり、それに伴って齲蝕の発生率が激減しました。また、国民1人あたりの砂糖消費量が多くなればなるほど、齲蝕の発生が増加した、という報告もあります。近年では、人々の健康意識やSDGsへの関心の高まりから、全世界で砂糖消費量は少しずつ減少傾向にはあるようです。日本は世界から見ても国民1人あたりの砂糖消費量は多くありません。

しかし、近年では、1人あたりの砂糖消費量が日本の2倍近くある欧米諸国では、齲蝕の発生率が日本より低く、今まで考えられてきた砂糖消費量と齲蝕の発生率の関係性が崩れてきています。これは、先ほど説明したカイスの輪と同じで、齲蝕発生の因子が複雑に関係していることから、フッ化物配合歯磨剤の使用などにより、齲蝕発生を起こさないよう工夫がされているのかもしれません。

 

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③宿主因子(歯質、唾液)

唾液は自浄作用といって、プラークが歯についても洗い流す作用を持っています。もちろん全部は洗い流せないので、プラークを落とすには歯を磨く必要がありますが、唾液が少なくなる夜間就寝時は齲蝕になりやすいと言われています。その他唾液には、抗菌性を持つ成分や歯の再石灰化を促す成分、細菌が産生した酸を中和する成分などが含まれており、齲蝕を抑制する働きがあると言われています。ただし、先ほど説明したように、個人によって唾液の成分や量も大きく異なります。

宿主因子のもう一つ、歯質については、歯の形態や歯並びも大きく影響を及ぼします。プラークが溜まりやすい形状では、当然齲蝕になりやすいのです。口元の見た目やかみ合わせを理由に歯科矯正を行う方は多いですが、齲蝕や歯周病を予防して自分の歯を保つためにも歯科矯正をおすすめすることがあります。その他、元々歯の表面のエナメル質の形成が少ない(弱い)人もいますが、フッ化物配合歯磨剤を使用すると歯の再石灰化を期待することができます。補助的に使ってみるのもおすすめです。

 

④時間

糖質の取り方と齲蝕の関係性

ある病院で食事と共に与えられた糖質は、齲蝕発生に影響はなかったが、砂糖を含むトフィーやキャラメルなどの粘着性のあるものを与えられた群では糖質が口腔内に停滞して、齲蝕の発生が多かったことが分かりました。また、間食の回数と齲蝕の発生を見ると、間食が多いほど齲蝕の発生率が高かったことが分かりました。すなわち、間食の回数が多く、粘着性の高いキャラメルなどを食べると、齲蝕になりやすいということです。

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このように、齲蝕(むし歯)は様々な原因があってできることが分かりました。歯をきちんと磨くことはもちろん、お砂糖を含んだスイーツやジュースを食べたり飲んだりした場合は、気を付けなければいけません。お菓子を食べた後に毎回磨くのは難しいという方は、少しお水でお口をゆすぐのも効果的です。

むし歯を発生させない甘味料を使うのも良いと思います。身近な物ですと、キシリトールのガムなどでしょうか。フッ化物配合歯磨剤を使って歯磨きすることも、特にお子さんでは重要だと考えます。どのような歯磨き粉(歯磨剤)を使ったら良いか、ぜひL歯科クリニックでご相談いただければと思います。

 

参考)

・口腔生化学(第6版)

・World Health Organization Guideline: Sugars intake for adults and children.

・Scheinin A and Makinen KK, Ylitalo K
Turku sugar studies.V. Final report on the effect of sucrose, fructose and xylitol diets on the caries incidence in man. Acta Odontol Scand, 34; 179-216. 1976

L歯科クリニック 歯科医師 副島寛貴

 

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